† Lの呪縛 †

気まずい雰囲気の中、口を開いたのはエリオットだった。



「一年程前からお付き合いしているジュリアンナだ。 ずっと兄さんに紹介しようと思ってた」



ジュリアンナは頭を下げた。


幼い頃からきちんと教育を受けていた事を伺わせる上品な仕草。


上流階級ではないが、貴族の娘としての教養は十分にある。



「安心した」



ダグラスはノエルに温かい笑みを向けた。


その笑みを見て、エリオットはホッとした顔をした。



「お前は昔から自分の事を語ろうとしないからな。 お前が選んだ相手ならば、私は何も言うまい」

「誰かいい人はいらっしゃらないのかと思っていたけれど、こんなに綺麗な方がお傍にいらっしゃったのね。 隅に置けないわね」



クレアの言葉に過敏に反応し、頬を赤く染めたのはジュリアンナだった。


貴族の間で幾つになっても可憐で美しいと評判のクレア。


そのクレアに褒められた事が嬉しくて堪らなかった。



「レッドフォード伯爵、それに伯爵夫人にこうして御目にかかれて光栄です。 今後ともどうぞ宜しくお願い致します」

「私の事はクレアと呼んでもらえたら嬉しいわ」

「ありがとうございます。 では、私の事もジュリアンナとお呼び下さい」



女性同士の会話をそっと見守るダグラスとエリオット。


微笑ましい光景は場を和ませた。