† Lの呪縛 †

事件の始まりは今年の八月下旬だった。


約一月で四人の娼婦が殺害された。


一人目の犠牲者は喉を切り裂かれ、腸は飛び出し、性器を刺されていた。


二人目の犠牲者も同じく喉を切り裂かれ、腸を肩迄引きずり出されていた。


だが一人目と違うところがあった。


それは子宮と性器、膀胱を切り取られていたというところだ。


犯人に自信がついたのか、はたまた憎しみもしくは快楽、感情に拍車がかかったのかは分からないが、犯行は明らかにエスカレートしていた。


そして今回新聞に載っている二人の娼婦。


犯行は同じく残虐なものだった。



「着替えて先に食堂に行ってるわね」

「あぁ、私も直ぐ行くよ」



ちゅッと軽く唇を重ね、クレアは寝室を後にした。


残虐な事件の話を耳にすると、どうしてもクレアは両親の事を思い出してしまう。


立ち直れているようで、まだ立ち直れていない。


拭いきれない悲しみと憎しみ。


クレアの心には影が潜んでいた。


その事にダグラスは気付いている。


だがその事について触れるつもりはない。


それはクレアを苦しめる事にしかならないと思っているからだ。


何も言わずとも、クレアを傍で支え態度で示す事、それがダグラスなりの愛情表現だった。