それだけ ~先生が好き~




「元気ないじゃん、どうしたの、ゆき」



真っ先に気づいたのは、悠。


私・・・ちゃんと笑ってるよね?

いつもどおりだよね?



「あはは、何言ってんの悠!!それよりさぁ、今日荷物超重かった~。悠ドライヤーって持ってった?」



空元気って、こういうことを言うんだろうな。

私の中身のない笑顔は悠に見透かされている気がする。



なんとなく、悠は不満そう。


それでも、言わない。


言えないよ。



だって悠には心配させたくない。



私のわがままかもしれないけど・・・。



ごめんね。







昼休みに、悠は私の手を引いて・・・一階まで連れ出した。


職員室の前まで来て、やっと止まった。



「何、どうしたの?誰か先生に用あるの?・・・あ、後藤先生?」


「ゆき、何かあったんでしょ」



やっぱり、わかってる。


悠は・・・ずっと考えててくれてたんだ。


それなのに、私は何も言えない。



「いいよ、うちに無理に話さなくても。ゆきは優しいからさ、心配かけたくない~とか、思ってんでしょ~?わかってんよ!!」



にかって笑った悠は、職員室のドアを開けた。