それだけ ~先生が好き~




結局よく眠れなかった。



学校に向かう足取りも重い。


私は、泣かない。

だって、あれ嘘だから。


嘘のこと、真に受けてもしょうがないし。


重い旅行バッグを手に持って、校門をくぐると・・・光沢のある生地の服を着た先生の姿が見えた。


隣には、数学の先生もいた。


荷物を送るトラックのそばに立つ先生は、疲れを見せない生き生きした顔をしている。



トラックの隣に立つ、運転手であろうおじさんが、私の手から旅行バッグを受け取り、

「奥に詰めても大丈夫ですか?」

と聞いた。



大丈夫です、と小声でつぶやき、そのまま昇降口まで早歩きした。



先生はまた何か言いたそうな顔をしていた。


その顔を長く見ている余裕が、私にはなかった。



元気がない私に、何かあったと思ったのかな。


きっとまた心配かけた。



やだな、自分が。


こんな自分が嫌で嫌でしょうがないよ。



だけど



現実から目を背ける私さえも、きっと先生は受け止めてくれる。


そして、支えてくれて


最後には、現実として真っ直ぐ目をそらさない私になれる。



先生が何かするわけじゃない。


そばにいてもらうだけで、私は変わるよ。


それすらも、今は出来ない。


先生はきっと忙しくて、自分のための時間すらないだろうから。