それだけ ~先生が好き~



「うん、ちょっと・・・いろいろあって」


お母さんは不思議そうに私にコーヒーを差し出す。


砂糖を入れるスプーンがうまくつかめない。


震えてるんだ。


昨日のことを思い出すだけで震える。


こんなんじゃ学校に行っても泣き崩れて帰ってくるだけだ。




「昨日ね、電話があったよ。夜・・・7時くらいだったかな」



電話?

誰だろ、城田かな。

でも・・・携帯にかけてくるよね。





「松戸先生って、体育の先生だっけ?その人から」






その言葉に、マグカップを落としそうになった。


・・・先生から?


心臓の音が大きくなる。



「今日の国語が体育になるって。担任の先生に伝え忘れたみたいだよ。だからひとりひとりに電話かけてたらしくてね」




連絡網か・・・。


ちょうどその頃私は部屋の鍵を閉めて大泣きしてた。




「ゆきさんいますかって言われて、部屋にこもってますって言ったら、すごく悲しそうな声になっちゃってさ。元気になれよって言っておいてください、だって」




先生



元気にならなきゃいけないのは・・・先生だよ。