それだけ ~先生が好き~




ドアに手をかけると、先生がイスから立ち上がる音が聞こえた。


振り向くと、先生が目の前にいた。




「じゃあな・・・また明日な」



うん、と頷いて、鍵を開けようとした瞬間・・・





顔を引き寄せられて



キス・・・された。




キスと呼ぶには、短すぎるかもしれない。

ほんの少し、唇と唇がぶつかったような感触。


目をつぶる暇もない。


だけど、離れたくないって気持ちが通じ合った。




そのキスが先生への気持ちは忘れることができないって確信させた。






もう一度微笑んで、ばいばいを言った。


鍵を開けて、走って下駄箱へ向かった。


振り向けばきっと先生が立っているだろうから・・・・まっすぐ前を見て走った。



さよなら



さよなら











土砂降りの雨の中、持っていた傘で顔を隠しながら泣いた。