「あ!申し遅れました。自分は医学部の山本 修です。」

「修さん・・ですか・・。私は小野寺奈緒です。」

「なおさんですか。でも・・、珍しいですね。数学が好きなんですか?

 こんな本読むなんて。」

「あはは、よく言われます。数学が好きな女の子なんて・・。

 本当に好きなんです。わたし、理系なんです。将来は高校の数学の先生になろうと思って

 るんです。」


「へえ・・。なんかいいですね。そうだ!今度一緒に食事でもどうです?ゆっくり話しましょう

 よ。」

「はい!そうですね。」


「決まりですね。ではまた。」






それから、二人は話したり食事をしたりした。だけど、なんとなく透に申し訳なかった。

ある日のこと。修は奈緒に言った。

「俺、将来は研究員になりたいんです。原因不明の病気をたくさん見つけて、一つでも

命を助けたい。」


「そんなんだ・・。修くん。実は私の母はね、重い心臓病なんだ。もう長くないんだって。」


「そんな・・。」


「だけど、毎日毎日一生懸命生きてる。少しでも。」

そのとき、なおの携帯に着信が入った。

「え・・。そんな・・。すぐ行きます。」


「ごめん!修くんまた今度!」


そう言って奈緒は病院へ向かった。