「奈緒!一緒に食事行こうよ。」

講義が終わったあとに友達の麻里が話しかけてきた。

「・・ごめんなさい。実は今日は透の命日なの。」

「あ・・ごめん・・。」

「いいのいいの。じゃあね!」

奈緒が行ったあと麻里と一緒にいた友梨香が言った。

「?透って誰だっけ・・。たしか経済学部の・・?でも、この前事故でなくなったっていう

・・・」


「うん。そうだよ。透くんはね、奈緒の恋人だったの。1年前に事故で亡くなったの。

 今日が命日よ。」

「そうなんだ・・。」

        *     *     *

「透・・。」

奈緒は、昔恋人だった、透のお墓参りに来ている。お墓には、お花が添えられている。

透の家族が来たのかもしれない。

透こと、山野透は奈緒のもと恋人だ。二人は高校3年の時から付き合い始めた。

しかし、一年前にドライブデート中に大型トラックに激突。奈緒は意識をとりとめたが、

透はなくなってしまった。それ以来、奈緒は男性と付き合うことを拒んだ。

「透・・もう春だね。」

奈緒は、一言つぶやいた。そして、静かにお墓に水をかけてその場をあとにした。