小さな手に少し大きめなフォークを持ってホットケーキをパクリ。
どうやら本人も満足なようで「おいひい!」と口に頬張ったまま目を輝かせていた。
琴海も同じく食べて「おいしいね」と息子を褒めていた。
まぁ、材料を調合したのは琴海なんだろうけど。
ママと息子の共同料理か。
俺は本当に幸せだな。
「悠里」
「なに?」
「ありがとう」
「うん!」
この時の俺は何も知らなかった。
俺が大切なことを“忘れている”ことに気付いていれば、この世界に留まり続けるなんて選ばなかっただろうに。
すぐにでも現実に戻ったよ。
琴海・・・悠里―――。


