仕方なく言われたとおりスッと体を離してやると、当の本人は点のような目で俺の目を捉える。 少しだけ潤んでいるように見える二つの目は、俺が強く抱きしめすぎたせいだろうか。 すごく物言いたげな視線が刺さってイタイ。 無言の訴えが目の前からヒシヒシと伝わってくる。 そこで俺が「ごめん」と呟けば、更にムッとした顔になった。 俺が思っている以上に不機嫌なことはよくわかった。 俺はまた琴海が涙を流してしまわないように、目元をそっと撫でてやった。 親指がほんのりと湿った。