理由は簡単だ。

もう浩治に、愛想がないからだ。

あなたに愛想はないの。

とっくの昔から、あなたには愛想はつきてるの。

自分の奥さんになる人のことを、彼は何にもわかっていない。

丸わかりのウソに作り笑い、投げやりの言葉に嫌いなもの。

あなたは、何1つと言っていいほどに私のことをわかっていない。


「いやあ、美味しかったな」

浩治のその言葉に、
「――そうだね」

私は答えた。

時間は夜の9時少し前だった。

車が今走っているところは駅前だ。