浩治がそれを手に取った瞬間、私は顔をしかめた。

「うん、美味い」

顔をしかめた私に気づいていないと言うように、浩治はエビのお寿司をたいらげた。

私はエビが嫌いだ。

理由は簡単、私の躰とエビの相性が悪いのだ。

パスタに入ってるのも、天ぷらも、お寿司も、いつもお皿の隅へ残していた。

でも、浩治は私の嫌いなものを知らない。

私がいつもエビを見るたびにしかめた顔をしているのに。

いつもお皿の隅に避けて残しているのに。

浩治は、何も知らない。

けど、自分から教えるつもりもなかった。