もしあの日、藤が私をホテルへ連れて行かなかったら?

もしあの日、藤のバイト先である居酒屋で送別会が行われなかったら?

別の日に会社の送別会が行っていたら?

そして…3年前に藤が私の会社にコーヒーの配達へこなかったら?

そう考えて、私は藤に視線を向けた。

きっと、私が今こうして藤の隣にいることはないだろう。

藤も、私と結ばれることなんてなかっただろう。

「愛莉」

藤が私に自分の手を差し出した。

差し出したその手に自分の手を重ねると、ギュッと繋いだ。

「藤」

私は彼の名前を呼んだ。

「んっ?」

藤が私を見た後で、
「好きだよ」

私は言った。