理想の男~Magic of Love~

「藤くーん、5番テーブルお願ーい!」

「はい、ただ今!」

その日は居酒屋のバイトだった。

愛莉のことを忘れるため、昼は喫茶店、夜は居酒屋とバイトに勤しんでいた。

その間に舞台の稽古をしたり、次の舞台の脚本を書いたりしていた。

気を抜くと、愛莉を思い出しそうで怖かった。

自分の手で毎日を忙しくして、気を抜くすきを与えないようにした。

「お座敷の方の片づけお願い」

上司に言われて、
「了解です」

返事をして、ふきんとお盆を手に宴会の真っ最中のお座敷へ向かった時だった。

「愛莉先輩、大丈夫ですかー?」

「だいじょぶだいじょぶ」

俺は立ち止まった。

その名前を、俺が聞き間違える訳がない。

お座敷からフラフラになりながら出てきた彼女に、俺は信じられなかった。