大きな鞄



美里を乗っけて、自転車をこいだ。

卒業してからは、車ばかりで自転車に乗ることはほとんどなかったから、こうやって美里を乗っける事もなくなっていた。

僕は、美里と美里の未来を乗っけて、朝靄の中駅までの道をひた走る。
なだらかに続く上り坂が苦しくて息が切れたけど、絶対に止まったりしなかった。
後ろに夢を乗っけた僕は、止まるわけにはいかないって思ったんだ。
美里が夢に向かうこの道は、立ち止まっちゃいけないって。

美里は、後ろから何度も頑張って。って声を掛けてきた。

その声は、やけに楽しそうで、無理にはしゃいでいる気がしてならなかった。