「何で自転車がいいの?」 車の免許は、高校を卒業してすぐに取った。 中古だけど、車だって持っている。 だけど、美里は自転車で駅まで送って欲しいと言った。 学生の時みたいに、高校へ二人乗りで通っていた時みたいに、僕の後ろに乗りたいっていうんだ。 大きな鞄を背中に背負って、美里が後ろの荷台に腰掛ける。 「カゴのところに乗っけようか?」 鞄を指差し訊ねると、首を一度だけ横に振る。 大切な未来の詰まった鞄を、美里は自分で背負いたいのかもしれない。