始発の電車が動き出す前に、僕は自転車を押して美里が住むアパートの前に来ていた。 「みさとー」 ノックをして声を掛けると、この前買った大きな鞄にいっぱいの夢を詰め込んだ美里が部屋から出てきた。 その顔は清々しく、未来に希望を感じているように明るい。 ドアから覗き見えた美里の部屋は、既に空っぽになっていた。 一緒に座ったソファも、映画を見たテレビも、ご飯を食べたテーブルも、もうそこには何もない……。 僕たちがいた一緒の時間が、もうそこにはない。 その現実が僕の心を押しつぶす。