大好きな人の声だ。 すぐ分かるよ、あんなに聞いたんだもん。 必死で私のことを呼んでる。 でも、会えない……、 だって傷付けた。 それでも必死で私に手を伸ばす彼。 駄目だって。 そんなに手を伸ばしたら、少しだけ触れてみたくなる。 遠慮がちに伸ばした手を彼はしっかりと握りしめ、暗闇から出してくれた。 「菜知!菜知!」 その声にゆっくりとまぶたを上げた。