次々と想像もしてない事が起きてただ、聞いていることだけが
精一杯だった。
「医者に聞いたらね、すごく悲しいことがあると
脳が自分を庇って忘れさせるみたいなの。
だから、いつあなたの事を思い出すか分からないし、
もしかしたら一生思い出さないかもしれない」
映画の中にいるような話だ。
その言葉を信じたくなくて、気付けば現実逃避しようとしている自分がいた。
「その後、菜知の部屋に入ったら
あなたとの思い出のものが一切無かったわ。
入院前に思い出さないように処分したかもしれない。」
それだけ言って母親は一呼吸おく。
ああ、何か重要なことを言う
それだけは俺にも分かった。


