お母さん、

お父さん、

胸が痛い、

胸が苦しい、

ウトウトしかけていた萌依は、

胸の急激な痛みで目を覚ました、

急いで、緊急ボタンを押すと、

いつものように、胸をゆっくり通し始めた。

「どうされました?」

非常事態とでも言うように、看護差しが勢いよく病室に駆け込んできた。


「胸が、胸が痛いんです」


「何か持病は?」

「心臓病が。」

「主治医はいますか?いたら先生の名前を」

「東条先生です。」

「わかりました。」

1分、2分、

看護師がいなくなってしばらくすると、

主治医の東条先生が現れた。

「萌依じゃないか、どうしたんだい?」

「胸が痛い」

「薬は飲んだか?」

「最近、なんともなかったから」

「ダメだっていっただろう、薬を飲まなきゃ」

「うん、でも、あれ苦くて」

「これからはちゃんと飲みなさい、君の体、いや命にかかっているんだ」

命、かぁ、


少し考えてみた。


いつも命については両親にも主治医にも言われている。

命なんて一個しかない、

だけど、その命がないと人は生きられないから不思議だ。

もし、命がなくなれば私は死ぬ。

そんなのわかりきってくること、

私は死が怖くないんだ、

そうこの間気づいた。


今までの入院生活の中で、たくさん死んでいく人を見た。

親友も、近所のおばちゃんも、

みんな死んでいった。

今前の病室にいて、残っているのは私だけ、

ガンとか、

病気とか、

いろんな理由で死んでいった。

だからなのかな、私も誰かが迎えに来るような気持ちで、今いるんだ。


だからなのかもしれない、死が怖くないのは。