目を瞑ると、

彼が鮮明に思い出される。

綺麗な瞳、

まるで女の子みたいだった。

ポツリと少し失礼なことを呟く萌依は、

だれかにコツンと何かで頭を殴られた。

「誰が、女の子なのかな、ほらご飯よ^^」

看護師さんに、運んでもらった、

病院の入院食を少し口に含むと、

「マズ」と萌依は言う。


味にうるさく、好き嫌いも多い萌依。

いつも母や父の作ってくれる萌依の特別料理に舌が慣れているせいもあって、

病院のご飯はマズイ以外の何者でもなかった。


「我慢して少しは食べるのよ」

優しく言っているようだが、目は真剣で、

萌依は仕方なく頷く他なかった。

大好きだった、母、

大好きだった、父。

今は二人共海外勤務でしばらくは会えないかもしれない。

いつもだったら、とんで駆けつけてくれただろうにな、

なんて、ありもしない夢を胸に、

少しだけしか食べていない、病院食をそこそこに、

萌依は、ベットに横になった。


入院は始めたじゃない、

病院食も初めてじゃない、

けれど、やっぱりいつもと違うのは、

安心させてくれる両親がいないというところだろうか、

それとも、病気じゃなく入院しているということだろうか。

どちらにせよ、

さみしいのも、

なにか苦しいのも変わらないのだった。