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ファー、萌依はいつもの如く、伸びを少ししながら学校への道をゆっくりと歩き始めた。

綺麗な空、

暖かい太陽の下を、いつものように。

キー、突然目の前が真っ暗になった。

最後に見えたのは、

焦った表情をした男の子と、

携帯でどこかに必死に電話をかける若い男性の姿だった。



目を開けると、白い天井、白い壁、

あー、病院なんだと悟った。

「目、覚めたんだ?」

どこかで見たような、見てないような、そんな男の子が目の前にいた

「はじめまして、藤堂萌依です。」

一応自己紹介でもしておこうと、少し痛む体を無理に起こし、会釈する。

「急に起き上がったらダメだって、僕は、東条空です。」

何かの、絵本に出てくる白馬に乗ったかっこいい王子様みたい、直感的に萌依は思った。


「空くん、助けてくれたんだよね、ありがとう」

確信はなかったけれど、ここに居るということ=助けてくれたと考えた萌依は、

空にそう告げた。

「いえいえ、そういえばお医者さんがしばらくは絶対安静っていってたよ」

のんびりとしているのだろうか、言うのがだいぶ遅い、

「あー、ありがとう、でも、もう起き上がっちゃったし。」

「ほら、早く寝ないと、お医者さん来ちゃう。」

なーんて言ってにっこり笑う彼は、

すごく、かわいいななんて思う。


自分のことながら意味不明なんて萌依は思った。


「どこの学校?」


気づくと二人は普通に仲良くなっていた。

実は同じ中学校に通ってる二人、

空は当然のことながら萌依を知っているが、

そこまで目立たない、ましてやおとなしく、おっとりしている空を萌依が知ってるはずもなく、

たった一日で、二人は知っている人から仲良しまで進歩しているから不思議だ。


「また、明日も来てね、」

面会時間ギリギリまでいてくれた空に、お礼を言いながら萌依は少しためらったようにそう言った。


「もちろんだよ」

またもや、ニッコリと微笑み、空は部屋を出ていった。


二人で騒いだこの部屋も一人になると、静かになる、

当たり前なのに、

少し寂しくて、めいは涙した。