春が来た。
 桜が彼の目の前を横切る。
 ふと見上げると、そこには澄んだ青
い空。
 彼がいるのは3年B組、窓のそば。
「今年でもう3年生か……」
 彼、新藤修二はそう呟いた。
「ふふ。これであんた、本当にここのトップになったってことね」
 と、いつの間にか修二のとなりにいた女子生徒が、彼の独り言に返事をした。
「うわ、み……加賀谷」
「見優でいいわよ、修二」
 ふふ、と笑うこの姿からは、『ただの』女子にしか見えない。
「ちっ。で? 何の用だよ、見優」
「ちょっとー、あんた私の立場忘れちゃったの??」
「……ああ、なるほど」
 修二は小さい頃を思い出した。よく見優が家に遊びに来たこと、近所のガキ大将を二人して泣かせたこと……。
「最悪な幼馴染みじゃねえか、俺ら!」
 修二は急に叫んだ。苦い思い出……というか悪い記憶を追い払うように。
「何、今ごろ気づいたの? ていうか幼馴染み関係無いし」
「え? 俺たちの関係って幼馴染み以上幼馴染み未満じゃねえの?」
「どれだけ限定された付き合いなのよ!しかもいつの間にか私、ツッコミになってるんだけど!?」
 私はボケでしょー!と叫ぶ見優を横目に、修二は、今日が『特別な日』なのを思い出した。
「あれ、入学式終わったんじゃねえか?」
 修二が体育館の方を指差して見優を見る。見優に見てくれと言っているようである。
 それに素直に従う見優。こういう時の修二が純粋なことは、見優が幼馴染みじゃなくてもわかる。
 見優は少し微笑んで、修二が指差す方向を見た。
「まあ、終わったんでしょうね。そろそろ下行く? 私たち一応お忍びで来てるんだから」
「おう。新入生上がってくるかもしれねえからな。行こうか」
「うん」