「おかしな発想だわ。
叔母と友達だからってあたしがあんたの友達になるとでも?」
一結は探るように目を上げた。
志紀子の名を出したのは効果覿面だった。
「ダメかい?
人類みな兄弟と言うじゃないか。その応用版で人類みな友達」
私が車に肘を乗せたまま大げさな手振りで説明すると
一結はさっきの涙をしまい込み、うっすら笑った。
氷の微笑―――ではなく、それは私にとって心地よい微笑みだった。
温度で例えるなら4℃と言うところだろうか。
(※その温度は氷が張られた湖の底の温度だといわれ、水面中の魚にとっては安息や潤いを感じさせる温度なのだそうです♪)
彼女がもっとも美しく映える微笑だった―――とでも言うべきだろうか。
「あんた面白い男ね。
名前、教えて。名前も知らない〝友達”なんてあたしはいらない」
きっぱりはっきりと言われ
あ
こうゆうのは―――嫌いじゃない
とその瞬間思った。
「私の名前かい?
〝友達”として君には特別に私の本名を教えるよ。
『玄蛇』
と。
それが名前さ」



