「何度も言わせるな。私は引き受けない」
十朱 志紀子は赤い唇を引き結び、
「どうしても?」と粘り強く聞いてくる。
「どうしても」
今度は私の方が氷の微笑を浮かべる番だった。
ふぅ
十朱 志紀子は小さく吐息をつき、額を押さえると椅子に座り直し、またグラスにウィスキーを入れた。
「強情な男ね。どうしたらあなたは納得してくれるのかしら」
「それは私が決める。自分が面白そうだと思ったら引き受けるし、そうじゃなければ引き受けるつもりはない。
私はどこにも属さない、いわばフリーの殺し屋だ。
デメリットももちろんあるが、メリットは
仕事を選べる、と言うことだよ。
こんな仕事を生業としているからには楽しまなきゃ損だろ?」
私も同じように腰掛け、拳銃をテーブルに置くとわざと大げさにそっと手を離した。
装填された弾はまだ数発残っているが、ここに置いたのは彼女を信頼しているから。
何故なら彼女は頭が良い。
命が惜しければ私相手に―――拳銃を向けてくる、と言う愚かな真似はしないだろう。そうふんでいた。
「面白い男ね、あなたは」
十朱 志紀子は喉の奥で笑った。
「褒め言葉だと受け取っておこうか」
「褒め言葉よ。仕事の依頼を切り替えるわ。
青龍と白虎の首は一旦は諦める。けれどその代わりと言っちゃなんだけど
この娘の監視をしてくれないかしら」
テーブルにすっと差し出されたのは、まだほんの小娘―――のように見えたが
美少女と言う言葉がしっくりくるような娘だった。



