シャワーを浴び終えて、私はローブのまま部屋の照明は付けずにウィスキーグラスにウィスキーを注ぎ入れた。


ソファに座ることはなく、その背もたれに腰を下ろすとグラスに注いだウィスキーをストレートで一気に空けた。


誰が下戸だと噂を流したのか、最近では誰もがそう思っているから否定するのも面倒でそのように振舞ってはいるが


本当のところ、私は無類の酒好きだ。


だがしかし『好き』と言う理由で、飲み過ぎる場合もあるから普段は控えているだけで。


『酒で身を亡ぼす』と言う言葉あるように、私は文字通りそんなことが起こり得ないとは言い切れず、普段はあまり口にしない。


だがしかし、イチとのやりとりを思い出すとどうしても飲みたくなったんだ。


心地よい熱さと苦みが喉を通過して、風呂上りの体を潤してくれる。


タバコを取り出して、その場で一本吹かす。


うまかった。


部屋の明かりは点けないまま、マンションから見下ろす夜景と、タバコをつまみに飲む酒は最高にうまかった。


だけどその隣にイチが居れば―――もっと旨いに決まっている。


またもイチのことを思い出して、喉の奥を苦い何かが通って行った。





何故―――……私は―――






誰に問いかけるわけでもなく、その質問は空虚な部屋に吸い込まれていった。


ガラン…と響いてきそうなぐらいの物が少ないそっけない部屋。


いや実際家具や家電はあるし、そこには確かに生活の印が点在している。


けれどそのどれもが偽物っぽく見えるのは、ここが私の本拠地じゃないからだろう。


どこか作り物めいていて、まるでショールームのようないかにも出来の良い何かのお手本のような部屋だ。


その部屋を見渡し、ようやく納得がいった。





そっか……


私は―――「生きる」ことに……「生活する」ことに執着していなかったからだ―――


でもその光景は酷く見覚えのある光景で、それは何でもない



一結と同じ―――


あのホテルの光景と類似していたのだ。






ああ



私たちは





似た者同士なのだ―――