「分かってる。分かってんよ…


このままじゃ俺…迂闊に朔羅に触れられへん……それがどないなことなんか―――


想像しなかった思うか?」


―――朔羅に触れられない。


あいつが悲しいとき、俺はあいつを無条件で抱きしめることができない。


俺は響輔を見据えて言い切ると、響輔はほんの少し眉を下げて悲しそうに…とても悲しそうに笑ってゆっくりと俯いた。


俺よりも―――何だか響輔の方が今にも泣きそうな雰囲気だ。







「別れを―――……?」






響輔が俯いたまま小さな小さな…ほんまに消えてしまうんやないか…てぐらいの小声で言うてきて俺は目をまばたいた。


まばたきをするたびに何かが目がしらからこぼれそうで、俺は必死にその〝何か”を飲み込んだ。






「考えてる」






俺の声も小さく小さく…消え入りそうになっていた。


俺と響輔二人の影が白いリノリウムの床に落ちていて、その距離は一定間隔をずっと保っていた。


けれどそれはほんの数秒間で


響輔が俺の方へ走ってくると、今度は俺をぎゅっと抱きしめてきた―――


覚えのある柔軟剤と…ほんの少しタバコの匂い。





「考えましょう。


二人でお嬢を救う方法を。




俺―――戒さんのそないな顔




見たない。





戒さんとお嬢には笑っててもらいたい。





我儘ですんまへん。







だから別れるのはもう少し――――考え直してください」








響輔―――……







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