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** 戒Side **



「戒さん、ちょっといいですか」


響輔に呼び出されて向かった先は、廊下の奥の奥に位置する


喫煙場所。


申し訳程度に設置された古びたステンレス製の灰皿を囲んで、俺たちは見つめ合って……訂正、見据え合って対峙していた。


いや、やっぱりこの場合見つめ合って、の方が正しいよな。


「響輔……」


「戒さん…」


「響輔」


「戒さん」


「響ちゃん!」


「戒さ…」


響輔が最後まで言い切らないうちに俺は


ガバッ!


響輔をぎゅっと抱きしめていた。


「ほんまにほんまに無事で良かったぁああああ!!」


今にも泣きそうに叫ぶと、俺より幾分か冷静だった響輔は俺の頭をぽんぽん。


「連絡できなくてすんまへん。でも俺怪我一つしてへんから。


心配かけて



すんまへん」


すんまへん


珍しく響輔は何度も何度も小声で俺に謝ってきた。


そんな言葉、俺には必要なかったし、欲しいとも思わない。


ただただ響輔が無事で良かった―――


それだけだ。


「「………」」


抱き合ったまま変な沈黙が流れ、俺たちは同じタイミングで体を離した。


「……やっぱ、抱き付くんなら女の方がええな」


「同感ですね。柔らかくない…」


感動の再会だってのに二人してガクリ。