朔羅の顔には小さな傷があちこちついていた。


そのどれもが消毒済みで、跡に残ることはないだろうと変態医師は言っていた。


でも響輔の傷は―――


朔羅が付けたとこいつが気づいたら、朔羅の心にまたも深い傷が残る―――


「明日朝イチで響輔を迎えに行く。


無事やなかったらただじゃ済まさへんからな」


俺は念押しして額を押さえた。


無性にタバコが吸いたくなった。


急激なストレスのせいだ。何だか胃の辺りがむかむかする。


それを押さえるように無意識のうちに尻ポケットを探って


「ちっ」


舌打ちをした。


ここは病室だ。



タバコを吸いたくなったが朔羅をここに残していくわけにもいかない。


俺は再び朔羅の頬を撫で


ホントは響輔を今すぐ迎えに行きたいんだが―――それが無理そうだ、とため息。


「響輔に何かしてみい。あんたの命はあらへんよ」


それだけ念押しして


「ほな」


通話を切ろうとすると



『待って』


イチの声が俺を呼び留めた。


俺の朔羅の頬に置かれた指先がぴくり、と動いた。