ケータイを握る手にぎゅっと力が入った。


少しでも力加減を誤ると粉々に壊れてしまいそうだ。慎重に力を抜いてケータイを握ると


一つ深呼吸して


「よぉ。またあんたか。


響輔の電話によぉ出るな。



響輔はどないしたん。


あんたもこの後に続く言葉は分かってんねやろ?



返答次第では―――」



言いかけると



『響輔は無事よ。


あたしの部屋に来て力尽きたみたい。麻酔薬…?が効いてるのね。


眠ってるわ。


あたしのベッドでね』


最後の一言が妙に意味深に聞こえた。


「ほんまか?」


俺が声を低めると


『残念だけど証拠はないわ。寝てるから声を聞かせられないしね』


と、随分余裕の声が聞こえてそれが真実であることに気づいた。





イチは響輔に惚れてるから―――




だからこいつが響輔を殺すことはないだろう。


俺はとりあえずの響輔の安否を知れて額に手をやった。


でもまだ無事な姿を見るまでは気が抜けない。


「あいつは怪我してんねん。はよ返してくれへんか?」


『額の傷なら手当てしたわ』


そっけない返事を聞き、俺は目を細めた。


無意識に…目の前に横たわった朔羅の頬をそっと手で包み込むとその白くて柔らかい肌を撫でた。