。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。




玄蛇が手当てをしている最中、響輔は起きだしてこなかった。


長い睫を伏せて固く目を閉じたまま、ただされるがまま。身じろぎ一つしない。


瞼さえも震えなかった。


まるで眠れる森のお姫様のように―――


生きてるのかどうかも怪しいぐらいだ。


時々心配になり響輔の口元に顔を近づけると、僅かだが息を感じてほっと胸を撫で下ろすこと数回。


その寝顔を見つめたまま玄蛇は無言で響輔の前髪を掬い、そっと額の傷を撫で上げる。


「ねぇ……さっき言ってた……キーマンて…?」


あたしの問いかけに玄蛇はうっすら笑って


「白雪姫も眠り姫も、お姫様は王子さまのキスで目覚める。


美しい物語だと思わないかい?」


と逆に質問を返され、あたしは肩をすくめた。


「あたしの質問の答えになってないじゃない」


「これが答えさ」


「またクイズ?あんた好きね」


言ってやると今度は玄蛇が肩をすくめた。


「ミステリーは謎が残ってた方が楽しいじゃないか。おとぎ話もまたしかり。


美しいおとぎ話も、現実では醜悪で愚劣なものなんだよ。書き換えられる前のグリム童話がいい例だと思わないかい?





お姫様は王子様のキスで目覚める



望んでいない王子さまのキスでね



その後に待っているのは





途方もない暗い現実だ」





玄蛇は面白そうな何かを見る目つきで響輔を見下ろすと、響輔の唇をそっと指で撫でた。



「何言ってるのかさっぱりだわ。


あんたって現実主義者なくせして、空想好き??」



そう言ってやると、玄蛇はあたしの言葉を無視して



そのまま覗き込むように顔を近づけると、何をすると思いきや



玄蛇はそっと響輔に






口づけ。