玄蛇が手当てをしている最中、響輔は起きだしてこなかった。
長い睫を伏せて固く目を閉じたまま、ただされるがまま。身じろぎ一つしない。
瞼さえも震えなかった。
まるで眠れる森のお姫様のように―――
生きてるのかどうかも怪しいぐらいだ。
時々心配になり響輔の口元に顔を近づけると、僅かだが息を感じてほっと胸を撫で下ろすこと数回。
その寝顔を見つめたまま玄蛇は無言で響輔の前髪を掬い、そっと額の傷を撫で上げる。
「ねぇ……さっき言ってた……キーマンて…?」
あたしの問いかけに玄蛇はうっすら笑って
「白雪姫も眠り姫も、お姫様は王子さまのキスで目覚める。
美しい物語だと思わないかい?」
と逆に質問を返され、あたしは肩をすくめた。
「あたしの質問の答えになってないじゃない」
「これが答えさ」
「またクイズ?あんた好きね」
言ってやると今度は玄蛇が肩をすくめた。
「ミステリーは謎が残ってた方が楽しいじゃないか。おとぎ話もまたしかり。
美しいおとぎ話も、現実では醜悪で愚劣なものなんだよ。書き換えられる前のグリム童話がいい例だと思わないかい?
お姫様は王子様のキスで目覚める
望んでいない王子さまのキスでね
その後に待っているのは
途方もない暗い現実だ」
玄蛇は面白そうな何かを見る目つきで響輔を見下ろすと、響輔の唇をそっと指で撫でた。
「何言ってるのかさっぱりだわ。
あんたって現実主義者なくせして、空想好き??」
そう言ってやると、玄蛇はあたしの言葉を無視して
そのまま覗き込むように顔を近づけると、何をすると思いきや
玄蛇はそっと響輔に
口づけ。



