。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。




その後も玄蛇は手際よく響輔の手当をしていって、持っていたキットの医療用針と糸で縫合を済ませると


(何でそんなもの持ち歩いているのか謎だったけれど)


血の跡をそっとシーツの切れ端で拭い、そしてあっという間に響輔の額にシーツで即席の包帯がきれいに巻かれた。


「さすがね」


腕を組んで「ふん」と鼻息を吐くと


「これでも昔は第一線で活躍する兵士だったんだ。これぐらいどうってことない」


「兵隊……?じゃぁあんた軍人だったの…」


知らなかった…


玄蛇は最初から殺し屋だったと思ってたから。


でも考えたらこいつだって人間だし、いきなり大きく…歳をとるわけないし、過去だってあるわけで。


「大昔のことさ。アメリカ陸軍に居た。現役時代は短かったけれどね」


「何故退役を…?怪我でもした?」


見たところ玄蛇の体には理由になる古傷なんて見当たらなかったけど。


玄蛇はその問いかけに答えてはくれなかった。


ただ


「当時のチームだった連中を全員殺した。それだけだ」とだけ。


“それだけ”とくくるには大きなことだけど


玄蛇はそれ以上聞いてほしくなさそうだった。


だからあたしも聞かなかった。


ただ


会話をしているとこの男がどれだけ恐ろしい男なのか理解できるのに


玄蛇の響輔を手当てする手つきは優しくて


さっき触れられたときの感触があたしの中にリアルによみがえる。


玄蛇は怖いけど




同時に



同じだけ優しいんじゃないか―――




そんな気がした。



最後に響輔の瞳孔をちらりと確認すると響輔の血で赤く染まった手をたらいの中で洗い流し蛇は手を振った。


「これで大丈夫だ。あとは目覚めるのを待つだけだ」


「ホント?」


「ああ、誰が手当てしたのか聞かれたらドクターにやってもらったと言えばいい。


何の疑いも持たれない」



「本当に?」


あたしは疑うように目を細めたけれど


「本当に」


玄蛇はうっすら笑っただけだった。