離して…
離して
「離してよ!!」
あたしは力の限り叫んだ。力の限り玄蛇を押しのけようとした。
けれど心の中では違うあたしが言う。
嘘
離さないで
この手を離さないで―――今日だけは
傍に居て―――
今度は玄蛇は何も言わず、しかしその手を緩めることはなかった。
「離して!
どうせあんただって雇主のあたしに逆らえないだけでしょ!」
あたしはめちゃくちゃに手を動かして、玄蛇の胸や脇腹を殴ったり叩いたりしたけれど
玄蛇はただされるがまま、あたしの手を握っている。
「殴りなさいよ。あんたがいつも仕事をするように黙らせなさいよ!」
あたしの喚き声を聞いても玄蛇はただ目を細めてあたしの腕を握り、ずっとあたしの顔を見据えている。
「何、その眼は!
あたしを憐れんでるつもり!?
可哀想な女だ―――って。同情でもしてるの!?
そうよ!!あたしは一人よ!
いつだって一人よっ!!
誰もあたしを愛してくれない。
あんただって
あたしの傍に居るのは仕事のためだけ―――」
何度目かの叫び声にかぶせるように玄蛇は口を開いた。
玄蛇は怒ったのだろうか、僅かに眉を吊り上げて
「じゃぁ君を黙らせよう。
私が本気を出したら君の細い首なんて数秒で折ってやることができる」
静かに言い放った。
怒らせた―――………
と言うのが分かった。
今まで酔いに任せて言いたい放題だったけれど、言い過ぎた。
玄蛇の骨ばった手があたしの首に伸びてくる。
「や……!いやっ――――……!」
今さらながら命乞いをするようにあたしは玄蛇から顔を背けると
玄蛇はあたしの両頬をその大きな骨ばった手で包み
強引に
口づけをしてきた。



