私は拳銃をゆっくりと下げると黄龍の元に駆けよった。


息をしているのかどうかでさえ怪しいぐらい、その横たわった体はぴくりとも微動だにしない。


まるできれいな人形を見ているようだ。


慌てて屈みこみ、黄龍の胸元に耳を寄せると


トクン、トクン…と僅かな心音が聞こえてきて


私はほっと胸を撫で下ろした。


「今はただの検査中ですよ、お嬢さん。


彼は大丈夫です」


いつの間にか私のすぐ背後に回ったドクターに声を掛けられ、


だが


私は拳銃を突きつける気はなくなっていた。


「どこか悪いのか?」


ドクターに聞くと


「頭がちょっと…ふふっ」


ドクターは冗談めかして笑い、私は今度こそ拳銃のスライドを起こした。


銃口をドクターに向けると、ドクターはまたも慌てて両手を挙げる。


「戯言を抜かすな。私にその手の冗談は通じない。


頭をブチ抜かれたくなければ、私の質問にだけ答えろ」


せっかちに言うと


ドクターは片方の手を挙げたまま、片方の手でこめかみをちょっと掻いた。


「何と申し上げて良いのやら……特に目立った異常はないのですが


定期健診です」


「その言葉を信じていいんだな」


違ったら殺す


と言う意味合いで銃口を向けると



ドクターは


「ええ、間違いないです。嘘はついてません」


はっきり言い切って肩をすくめた。