私は追手から逃れるため窓を飛び降りた。


体が重力に流されて落下する。


耳のすぐ横で風を切る音が聞こえた。


その女の悲鳴のような轟音の中、






何故あの男―――



戒を



撃てなかった。







そのことだけを考えていた。


確実に対象を捉えていたのにも関わらず私は引き金を引くことができなかった。





何故―――




着地できるぐらいに意識が戻ると、


地面で、背の高い男がこちらを見上げてぎょっと目を開いていた。


「うさぎちゃん!?どうして!」


どうしてもくそもあるか。何だそのフザケタ名前は。


私は黄龍だ。どいつもこいつも。


それにこいつは何者だ。


またも新しい追手か。


「どけ!」


私は短く怒鳴り、手で払う仕草をしたが男はあろうことか両手を広げて私を受け止めようとしている。


落下する速度が間に合わない。


私はそのまま男の胸へと



落ちた。