男は人の波を縫って俺の前をどんどん走っていく。
かなりの俊足だ。
俺だって脚には自信があるのに、向こうは人と人との間を駆け抜ける技が長けている。
だがこっちは自転車だ。
チリンチリン!
「待てや、こらぁ!!」
派手にベルを鳴らして怒鳴ると通行人を避けるまでもなく、彼らの方が避けてくれた。
男はぎょっとしたように振り返り、狭い路地裏へと駆け込んでいく。
何で悪人(?)てヤツぁこうゆう路地裏が好きなんだろうな。
俺は自転車ごとその路地裏に突っ込むと
走り去る男にハンドルを向け、
「待て!言うたんが分からんのか、このボケぇ!」
自転車を飛び上がり、勢いをつけた自転車は主を失ってもかなりの勢いでその男に突っ込み、男にぶつかると派手に横倒しになったが、
俺だけは無事着地。
ふっ
10.0☆俺って完璧♪
と体操の着地のように勝手に点数をつけ、その向こう側で
「ぅわっ!!」
男は自転車に巻き込まれて派手に倒れた。横倒しになった自転車の前車輪だけがカラカラ音を立てて空回りしている。
その節にキャップが外れ、スマホが地面に転がった。
やっぱり見たこともない男だ。
俺がその男に近づくと、
「龍崎くん!」
帰ったはずの川上が息を切らして走ってきて、俺は目をまばたいた。
「川上……お前…帰れって言ったじゃん」
俺が表通りを指さすと
「そんなこと言ったって……」
川上はぜぃぜぃ肩で息をしながら倒れた男を見て
「田崎先輩……!?嘘…」
口に手を当てた。
タサキ―――って
誰やねん。



