雨の音のように降りしきるセミの声にも劣らず川上の声ははっきりと俺の耳に届いた。


川上は風でなびく髪と短いスカートの端を押さえながら、俺の方をまっすぐに見ていた。


その髪から朔羅とは違うみずみずしいフルーツのようなシャンプーの香りが漂ってきて、


少しだけ……意識させられる。


「…あたし……言い過ぎた…」


いつもと違うかっこをしているからだろうか。それとも少しだけメイクをしているからだろうか。


それだけじゃなく、やっぱり川上は‟きれい”に見えて―――


それは恋をしているだけじゃなかったようだ。


川上の本当の部分を俺が見ていなかっただけで―――俺が本来のこいつの良い場所は


俺が想像する以上にきれいなものだった。






「俺もごめん。俺も言い過ぎた。



理由の半分は‟それ”





ちゃんと謝りたかった」




まさか先に言われるとは思ってもなかったから、拍子抜けしたしかっこ悪いが。


それでもちゃんと謝っておきたかった。


後伸ばしじゃなく―――


「詫びと言っちゃなんだが、このあと夕飯も一緒にどう?ついでにデザートもつけてやるよ。


俺のおごり」


「今日の頼まれごとのバイト代?にしちゃ安い気がするけど、


いいよ。ありがと。


朔羅も来る?」


川上が無邪気に聞いてきて、





ちょっとだけ俺の胸が




痛んだ。