「てかオシャレしてんじゃん?もしかしてデートだった?」


響輔以外の男と。


あいつは朔羅に付き切りだ。


俺が冗談を飛ばして笑うと


「違うよ。お母さんが銀座に連れて行ってくれて、一緒に買い物してたの」


「へぇ銀座ぁ。お前ってセレブ?」


「そんなわけないでしょ?あたしは付き添い。


ケーキ食べさせてくれるって話だったから、ついていったのに……食べる前に龍崎くんに呼び出されて食いっぱぐれたよ」


川上はさも迷惑だ、と言わんばかりに唇を尖らせる。



それでも―――


来てくれた。





「悪りぃな。ケーキだったら俺が食わせてやるよ。


何ならパフェでもいいぞ?」


俺が川上の睨みにも動じずにこにこ言い、さらにはまたいつもの冗談で肩を抱こうとすると


川上はサッと俺の腕から逃げて俺を睨んできた。


「あたしとケーキ食べたいがために呼び出したわけじゃないでしょう?


目的は何なの…」


警戒するような視線だ。


俺が川上を呼び出すのなんてはじめてのことで、警戒されてるのは分かる。


でもそれと同じぐらい俺の要件が気になる―――って感じだな。


俺はため息を吐いた。


「ちょっと調べものに付き合ってほしいんだけど」


俺が言いにくそうに切り出し、でもそれ以上の説明を省いて図書館の中へ入ろうとすると







「ねぇ」



呼びかけられて俺は止まった。


無言で僅かに振り返ると







「こないだはごめん」






川上の揺れる声に合わせて僅かに、伸ばしかけの髪やスカートの裾が風で揺れた。