足裏が冷たいと思ったら、私は裸足だった。


入院でもしていたのだろうか。


ベッドの足元にウェスタンブーツが一足揃えて置いてあったからそれを履いた。


男から白衣を奪い袖を通し、何かの見取り図が表示されているタブレット端末と


自らの手でマガジンを装填した拳銃とを持ち、


私は部屋を出た。





――――





慎重な素振りで廊下を出ると


「何事だ!」

「銃声が聞こえたぞ!」

「どの部屋だ」



あちこちで野太い男の声が聞こえてきた。


私はタブレット端末を白衣の中に隠し持って、顔を俯かせると廊下を早足で歩いた。


この顔がどれだけ認知されているのか分からなかったが、気づかれれば強行突破をするつもりだ。


だがその心配も杞憂に終わった。


「不審者を見なかったか?」


一人の男に声を掛けられ、私は首を横に振った。


どうやら混乱のさなか、私を不自然なドクターだと見抜けなかったようだ。


男たちは諦めて再び捜索をしている。



廊下の影に隠れて、私はタブレット端末を開いた。


どうやら病院はかなりの規模のようで、東と西、中央に一棟ずつ建っているようだ。


私が居るのは中央棟の七階。


見取り図で位置関係を把握するよう指を這わせていると、図の一部がピカピカと点滅していた。それはゆっくりしたスピードで移動している。


私は目を細めてその動きを追った。





キョウスケが不審者だと言った者に違いない。