またも急に涙がこみあがってきて、あたしは布団を引き上げた。


キョウスケの前で泣く、なんてみっともないとこ見られたくないし。


漏れそうになる嗚咽をこらえていると



ギシッ


ベッドの端にキョウスケが腰掛ける気配があった。


さらには…パラパラと何か紙をめくる音が聞こえる。


傷心中の乙女のベッドで何やるつもりだよ…


と、一瞬だけキョウスケを疑ったが…


けど


やっぱキョウスケはあたしが思うジェントルで―――



「You mean more to me than words can say.
All I do is think of Sakua.」



まるで優雅なイギリス貴族が詩を朗読するような感じで流暢な英語を喋り出し、ゆっくりしゃべってくれたからあの参考書に書かれていた戒の落書きだということに気づいた。


「落書き書いてありますね。戒さんの字だ」



ちょっと布団から顔を出すと


「寝言を言ってらしたので……参考書がどうのこうの、落書きが…どうとか。


失礼ながら拝見させていただきました」


あたし―――そんなこと言ってたの??


ぅわ!恥ずかしーーー!!


けど


恥ずかしいあたしを笑うでもなく、キョウスケは少し寂しそうに眉を下げ





「意味は





‟言葉では言い表せないほど、君が大切だ。





朔羅のことが俺の頭から離れない”






です。







きっと今も変わらず戒さんはお嬢のこと考えてますよ」