文字通りこのスマホが命綱だな。
俺はスマホを落とさないように慎重に進んだ。
通気口ダクトは狭いし暗いし、おまけに埃っぽくて何度も派手にくしゃみをした。
換気の空気が入ってきているのか薬品や食品、下水なんかの臭いが入り混じって俺の鼻を刺激する。
俺は特別に鼻が良いから、息をしているだけでも気持ち悪くなった。
くっそ、響輔め!出たらまた何か奢らせてやるからな!!
恨みがましい気持ちと一緒に体を引きずりながら俺はひたすらに前に進んだ。
前に進んで気づいた。
「こりゃ思ったより複雑だぜ?」
『そのようですね。パソコンがあれば通気口もハッキングできるんですが』
「アホ。それは危険だっつうの」
『戒さんにアホ呼ばわりされる日が来るなんて…』
………
「お前はアホだよ。
―――何でこんなんなってまであの女狐を庇うん?
好き、とか絶対ちゃうやろ」
俺の声がやけに大きく通気口の中で響いて、けれど響輔の答えはすぐに返ってこなかった。
諦めて前に進もうとすると
『俺
女痛めつける趣味あらへんですから。
一結も
一応女や』
一応…ね。
そんな単純な問題か?答えになってねぇじゃん。
響輔はそれ以外に何かの感情を隠している。
それは響輔が頑なに喋りたがらない、朔羅の秘密と直結していると―――
そんな風に思った。
けれど俺はそれ以上何も聞かず口を閉ざして前に進んだ。
何も聞けない、ってのが正直なところか。
すると少し進んだときに男の声が聞こえてきた。
近くに病室があるのだろうか。
明かりが見えて、慎重に進んでいくと部屋に続く蓋が見えて、そこから部屋の様子を眺めることができた。
通気口の蓋から下を見下ろすと、そこはあの変態ドクターの診察室なのか、ヤツが一人回転椅子に腰掛けて、パソコンに向かっていた。
『―――…戒さん…』
急に沈黙した俺に響輔が問いかけてくる。
「しっ!ドクターの部屋の上だ」



