「ほんと……最低ですよ」


低い声が聞こえてきて、俺は顔も上げずにいられなかった。


「でも間違ってもいいんです。時には」


またも頭上から声が聞こえてきて




「会長もお嬢も




―――あなたも




俺だって、間違いだらけです。



でもそうやって成長していくものです」






ぽん



頭にそっと手を乗せて、ふわふわとぎこちなく撫でるその手つきは温かくて優しかった。


廊下の窓に映った光景。


それは


ベンチに力なく腰掛け、ただただ顔を項垂れている俺と、その真正面に立った響輔が俺の頭を撫でていた。


昔から変わりない馴染みのある光景に、小さな頃の俺と響輔の姿を投影してみる。


それは投影なんかじゃなく、記憶の一部。




俺はガキの頃から何も変わっちゃいない。


でもガキの頃から変わらないこの関係が―――今でも続いてくれていて


良かった。