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** 戒Side **




あいつを泣かせた。


あいつを悲しませた。



俺、気づいたらあいつを泣かせてばかりだ。


笑っててほしいのに―――



そう思えば思うほど、大切にしたいと強く願えば願うほど


俺はあいつを傷つける。


でも今回は特に酷い。



あいつのもっとも触れられたくない部分のスイッチを知らずのうちに押してしまった。





ただ






大切やった。


守りたいだけやねん。







両掌を広げてぼんやりと眺める。





「俺、サイテーやな」






広げた手のひらをもう一度握りしめ、額に手を置き頭を項垂れる。


「サイテーや」


もう一度呟き、今度はくぐもった声になった。


俯いて、床に落とした視線の先に黒い影が近づいてきた。