お嬢が運ばれた病室は、とりあえずの処置室で今は簡易ベッドに横たわって眠っている。


血の気を失った青白い顔で、細い腕には点滴が刺されていた。





「朔羅―――」




横たわったままのお嬢に駆け寄り、会長はすぐにお嬢の白くて小さな手を握った。


本当に心配そうに、眉を寄せて


「朔羅……」


何度もその名前を呼び、その手を両手で包み込む。


お嬢の紙のように白い顔を見て俺は一瞬唇を結んだ。


「お嬢は本当に日射病なんだろうな?」


医者はすぐに病状を隠すふしがあるから。


それは『五分だけ』と同じぐらいの割合いだ。


「違ったらお前本当に命が危ういぞ。


見た通り会長はお嬢を溺愛されてるからな」


まぁ衛はそういうところストレートで、隠す、とか変なウソはつかないが


念のために聞くと衛はお嬢のカットソーを僅かにめくりあげその中へ聴診器の先をもぐりこませて胸元に聴診器を当てた。


俺は慌てて顔をそらして後ろを向く。


「弟よ。私の心配ですか。ふふっ。明日は槍が降るかな。


この私が誤診するとでも?」


妙な自信だが、間違ってもらっちゃ困る。


「もういいですよ」


その声で振り返ると、衛はお嬢に掛布団を掛けながらメガネのブリッジを直した。


気が付いたら約束の五分は過ぎていた。