「会長!」


俺が一喝すると、会長は今度こそ大人しくなって前髪をぐしゃりと掻き揚げ項垂れた。


強引に引き抜いた点滴の針はベッドのシーツの上に転がっていて、白いシーツに血の跡を点々と残している。


「まったくあなたは。無茶をなさって」


俺が点滴を拾い上げると


「衛、点滴の続きを。したままでもお嬢に会いに行くことは可能だろ?」


俺が確認すると


「いいですけど、五分だけですよ。


今は会長ご自身容体が思わしくない」


衛は腕を組み小さくため息。


医者としての衛は、お嬢の日射病より会長ご自身の体調の方が悪いと判断したのだ。


「医者はその言葉しか知らんのか。『五分だけ』」


会長は不満そうだったが、


俺の意見に双方が諦めて、妥協案と言う形で受け入れ


会長は点滴をしたまま俺と衛とで結局お嬢の病室へと向かった。