ドクターの言葉を聞いて足元から何かが崩れ落ちる感覚があった。


ピンと張ったピアノ線みたいな意識が切れて、俺はその場で崩れそうになった。


前にもあった―――


こんな感覚。


そうだ……あれは―――俺の知らないところで、朔羅がタイガに連れていかれたときだった。


足元から力が抜けて、ふわりと視界が歪む。


貧血持ちの鴇田は大変だな。


「戒さん!」


慌てて後ろから響輔が支えてくれる。


「キミの方がよっぽど倒れそうな勢いですね」


変態ドクターも苦笑い。




うっせぇな。



―――ただ、大切で




大切で






絶対失いたくない女を心配して







何が悪いってんだよ。