タイガ……お前居ないと思ってたらこんなところに居たんかよ…


「僕も資料を探しに来たんですよ~♥」


聞いても無いのにタイガはペラペラ喋ってくる。


こいつ、絶対俺のこと嫌いなくせに、何でヘラヘラいつもまとわりついてくるんだ。


俺はタイガの言葉を適当に流しながら脚立を探していると


ひょい


タイガは俺のすぐ背後で背伸びをすると、俺の探している資料のファイルを意図も簡単に手にとった。



たかが10cm。されど10cm。


175と185の身長の差はでかいな。



『例えば私が手に届かないものを簡単に取ってくれる男って、ちょっとドキっとするわ。


そこではじめて意識する、みたいな?


ありがちだけど、そうゆう身近なシチュエーションて恋には大きな出来事なの』



以前キリが言っていた。


言うまでもなく、俺とキリの距離が縮まったのはこれと同じシチュエーションだったからで。


まぁあいつは女の中でも特に低い方だったし、


今と同じように龍崎グループ本社の資料室で高い場所にある資料を一生懸命背伸びして手を伸ばしてたあいつの手助けをしたところから


はじまった。


その頃俺はキリのこと少しも意識していなかったし、秘書の一人だと思っていたが、


いつもより距離を縮めて見る彼女の顔が思いのほか美しかったことに気付いた。




けれど俺は男だし


ましてや相手はタイガだ。


………



ないない。


ぜってぇない。