刑事は口の端ににやりと笑みを浮かべて今度こそあたしから離れていくと


「お忙しい中失礼いたしました。


何かありましたらまたお伺いいたしますので、今後ともよろしくお願いいたします」


またも丁寧な口調に戻り、今度はにっこり爽やかな笑顔で答える。


刑事が身を翻すとき、スーツの上着の裾が翻ってそのベルトに挟まれた




拳銃




が視界に入って、



ドキリ


あたしは目を開いた。


マネージャーは大人な対応でぺこりと頭を下げ、刑事が部屋を出て行くのを見送っていたが


刑事は部屋から出る直前、僅かに振り返り


「ああ、それと。今度そのチョコを食ったら感想いいますね。


ではまた」


ちゅっ


とこれまた全然嫌味じゃないスマートな仕草で投げキッスをして、刑事が部屋から消えると


「何なのあれ!!


無礼にも程があるわ!」


とマネージャーが目を吊り上げた。


「大体youがあんな恐ろしい事件と関わってるわけじゃないじゃない!


いくらお父さんのお仕事が“あれ”だからと言って疑うのも程があるわ!」


マネージャーは喚いたけれど、あたしはケータイとテディを胸に抱いたままただ無言で床を見下ろすしかできなかった。


「you……?大丈夫…?あなた震えが止まらないわよ…」


マネージャーに聞かれてあたしはそこでようやく自分が小刻みに体を震わせていることに気付いた。





――――怖かった




玄蛇があそこまで警戒する男が、何者なのか気になっていたけれど


その意味がようやく分かった。




あの男は危険だ。



早く手を打たないと







手遅れになる。


下手したらあたしも玄蛇も








終わりだ。






早く――――








手を打たなきゃ







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