俺がバっと顔を上げると、響輔がまたも怪訝そうに眉間に皺を寄せ


「それが何か?」と言いたげだ。


「響輔!有楽町の前の駅って何だ…!」


「前??…えっと東京駅。いや、日比谷ですかね」


「違う。山手線じゃない。俺が乗ったのは地下鉄だった。有楽町線だ」


「銀座一丁目ですかね…それから







桜田………」






さくらだ




言いかけて響輔も目を開いた。


驚愕とも困惑とも取れる複雑な表情だった。




「まさか」




「その『まさか』や!間違いないで!!


朔羅が電車で会った男が言うてたのは“その”ことやったんや



『さくらだ』にはまだ続きがあったんや!」



「ありえないですよ。だって…


お嬢は言うてました。会長とタチバナは同級やったって。


家に来たこともあるて。





戒さんのその仮説が本当ならタチバナは我々の









天敵―――








会長がそのタチバナとつるむはずがない。



手を組むなんてあり得ない」