「あのドクターも曲者ですね。


俺には何を考えてるのかさっぱりだ。日記は誰にも見せるもんじゃないですね」


響輔はノートを見下ろしながら、こめかみを掻いた。


顔には苦い表情が浮かんでいる。


日記??お前、日記なんてつけてんのかよ。


まぁ響輔の事情はおいといて~


「俺だってさっぱりだよ。何でイチの衣装を俺に手渡してきたんか。


何であいつが持ってたのか。


例えば…あくまで仮定の話だけど、ドクターが白へびだったとしたら?」


俺の推理にこめかみを掻いていた手を休めて響輔は目だけを上げた。


「でも神社で戒さんとお嬢を襲ってきたのは女だったんでしょう?」


「まぁな。そこんとこはまだはっきりしねぇけど、朔羅は女だって言うし。


白へびと名乗る人間が一人じゃなかったら?」


「その線は考えてなかったですけどね。でも神社の一件を考えるとそれもありかもしれませんね」


響輔はノートに視線を落とし、俺たちは


「「………」」


またも沈黙。


結局どんな意見を出しても直接的な答えにはならない。


響輔が何を考えているのか気になって、こいつの行動を何となく眺めていると


響輔の視線は設問⑧の『スネークは大狼 恵一か?』と言う辺りをさまよっていた。


俺はその⑧のところを指でトントン指し示し、その仕草に響輔がゆっくりと顔を上げた。


「まぁ一番疑わしいのはタイガだよな。


あいつ怪しすぎる。



お前とイチがはじめてカーチェイスした日の夜は





雨が降ってた」